11月19日この日、私は一つの憧れを胸に石川県美川町にある手取川に向かいました。「サーモンフィッシング」これは私にとって幼い頃からの憧れです。それは小学生の頃、どんなタイトルかは忘れたがただの釣り番組ではなく2時間のサーモン釣りを主とした2時間くらいの番組でした。浅瀬に群れるサーモンの姿、強烈に曲がる竿、大の大人が歓喜の表情で河原を走る姿。全てが鮮烈で子供の頃から今の今まで抱くことしか出来なかった憧れです。やっと今日あの魚を・・と思うと旅の始まりから胸が躍るもんです。
 古くから日本の河川ではサケ釣りが全面的に禁止とされて来ました。これは鮭と言う魚が昔より貴重な食料源であるという考えから禁じられています。1995年北海道の虫類川で調査という目的で始めて解禁されて以来北海道内に四河川(虫類川、元浦川、茶路川、浜益川の四河川)と本州ではこの石川県の手取川で調査という目的にて釣りを楽しむことが出来ます。但し事前にこの釣りに関するライセンス(採捕従事者資格)を漁協に申し込み、当選した人のみ釣りを楽しむことが出来ます。

 さて大阪から約4時間半ようやく手取川に着くと釣り場には管理事務所があり、その向こう側には河口近くに広がる手取川鮭釣り場が期間限定で毎年10月の中頃から11月の終わりまでこの川に設けられます。鮭にも色々と種類がいますがここで釣れる鮭はシロサケ(チャムサーモン)と呼ばれるもので鮭の中でも繊細な性格だそうですが、トルクフルで強烈な引きだと聞き、釣る前からドキドキしました。海に近く、河口に向かうと砂地の中洲がありその向こうは水平線の見える日本海の壮大な景色です。幸運なことに晴天のこの日がその美しさをさらに引き立てていた気がします。さて沢山の釣り人が鮭を求めこの日向かったところはどうやら上流側の川幅が狭くなっているポイントで、おおよそ50メートルくらい鮭を求める人達でひしめき合っていました。
 我々はプレッシャ−の高いこのポイントとは逆の河口側で竿を出すこととなりました。私はルアーの仕掛けで、同行者のエイト本店 店長中井はフライで,駒原氏は延べ竿で、それぞれの思い憧れを胸に一日中竿を振り続けました。残念ながら互いに鮭を掛けることは叶いませんでしたが、私はルアーに鮭らしい肉厚の魚体が私のルアーを追いかけてくる姿をただ一度見ることが出来ました。残念ながら私と中井氏も憧れが現実になることはどうやら来年に持越しです。そんな中、少し離れた上流でしぶとくエサで狙った駒原氏の竿に待望の鮭がかかり見事釣り上げました。エサは赤いタコベイトの下にサンマの切り身という仕掛けだったようです。残念ながら掛かったのはメスのほうで漁協に返すこととなりましたがその釣り味は感無量だったそうです。
 日も傾き、帰路の時間の都合などで我々は上流部にある石川県水産総合センター美川事務所を見学することとなりました。センター内にはサケの生態などを説明した資料などがあり、中でも遡上が見られる人工の水路を泳ぐサケの姿を見て来年に再トライすることを我々は心に誓いました。
 鮭という魚は川から海に出て3年から5年の回遊後、生まれた川に帰ってくるという神秘的な一面を持つ魚です。世界各地で人間の都合にて河川整備やダム建設などでこの鮭という魚が帰ってくる川が減っていると聞きます。先日新聞にてアメリカのある川でこの鮭の遡上を取り戻すため周辺の先住民、漁業関係者が立ち上がり遡上を回復させるためにダムが取り壊されることになったという記事を目にしました。幸いにもこの手取川にはまだ鮭は帰ってきます。最後の力を振り絞り産卵の為に帰ってきた鮭を釣ることは少し寂しい気持ちになりますが改めて自然の偉大さを考えさえてくれたこの鮭という大きな魚を一アングラーとして守って行くために出来ることをかんがえさせられました。釣りに行って坊主を味わうと、気が滅入りますが、この釣りというレジャー「魚」という相手が居てこそ成り立つ素晴らしいものだと改めてこのシロサケに教えられた気がしました。

        エサ一番ルアー館  大北 正樹